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小さい生き方 34

 2018-08-02
「土用丑の日」というのは、夏だけじゃなくて、季節の変
わり目にあるという。だが、この言葉は、鰻を食べて暑い
夏に元気を出す、ということの代名詞のように、頭にすり
込まれている。そういうものが一年の中にけっこうある。
「バレンタイン」「クリスマス」「母の日、父の日」
等々、販売促進のための企業戦略なのは言うまでもないこ
とだが、その時期になると否が応でも、目に耳に、入って
くる。と同時に、贈りたい、贈られたいという気持ちも芽
生えてくる。
懇意にさせて頂いているA社長は、土用丑の日に、毎年、
鰻の名店から数百尾の蒲焼きを取り寄せ、社員や取引先に
配っている。これは、実はとても労を要するのではない
か。まず、有名店から、そのまとまった数を調達すること
が困難だろう。そして、もっと大変なのは、日持ちのしな
い蒲焼きを、その日のうちに全部配らないといけないこと
だ。けれど、その労を知っても知らなくても、やはり土用
丑の日に鰻の蒲焼きを贈られるのは、とても嬉しいもの
だ。しかし、なにより素敵なのは、そうやって相手が喜ぶ
ことを推し測って実行するA社長の感性だ。
ところで、頭の良い人と、感性豊かな人は、どっちが価値
が高いだろう。どっちも素晴らしいことで、比べることは
ナンセンスかも知れないが、あえて検討してみる。ただ
し、ここで言う「頭の良い人」は、理論的、計算的能力が
高い人のこととする。イタリア、ルネサンスの時代、メディ
チ家という銀行家で政治家の一族はダヴィンチ、ミケラン
ジェロなど芸術家のパトロンとなり文化を育てた。また、
ルートヴィヒ2世という国王は、大作曲家ワーグナーに入
れ込んで、湯水のごとく財産を彼につぎ込んだ話は有名
だ。使い切れないぐらいの富を持つ人は、感性的なこと
に、大きな価値を認めているのかも知れない。しかし、感
性の豊かさとは、天性的なものだろうか。確かにそういう
部分もあるだろうが、後天的に養われる部分も多いと思
う。そして、私は、豊かな感性と、人を幸せにすることと
は、同義だと考えている。だから芸術に限らず、誰もが生
き方を通じて感性を磨くことが出来るはずだ。特に、世の
中の強者たる、頭の良い人や、富を持つ人が、感性を豊か
にすることを意識すれば、もっと幸せな人が増えていくの
ではないかと思っている。ごめんなさい、どっちが価値が
高いかというテーマは、もう、どうでもよくなってしまっ
た。
有名な瀬戸内寂聴さんが、テレビでこんな話をしていた。
自分は今、96歳になるが、毎年「母の日」には憂いてしま
うという。いつも、その日、寂聴さんのもとには、たくさ
んの贈り物が届く。ただ、実の娘からは届かない。寂聴さ
んは、そのことを「恥ずかしい」と言っていた。色々と事
情があったようだ。寂聴さんは、自己の句集で、こんな句
を詠んでいる。
子を捨てし われに母の日 喪のごとく
「母の日」に、母を悲しませないようにしたいものだ。

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